私は長年、高楼方子さんの大ファンで、お話を聞く機会をずっと待ち望んでいた。その夢がついにかなった。
高楼方子(たかどのほうこ)さんといえば、私が世界一大好きな絵本『ケチルさんのぼうけん』や、『まあちゃんのながいかみ』『まあちゃんのまほう』、『つんつくせんせい』シリーズ、幼年童話の『へんてこもりへいこうよ』のシリーズ、そして大人が読んでも引き込まれる長編『時計坂の家』など、すばらしい本を、すでに70冊近く出版されている人気作家。
高楼方子さんは、還暦を迎えられるとは思えないほど、若々しく素敵で、高楼さんの書かれる絵そのままの、少女のような雰囲気を持った方だった。
最近出版されたご自身の本の中から何冊かについてお話してくださった。
『ルゥルゥ おはなしして』
高楼方子さんは、自分の子ども(お嬢さん)のことを書くより、自分が子どもだった時のことを思い出してお話を書くことが多いそうだが、この本だけは、お嬢さんが1人で人形遊びをしていた時のことを思い出して書いたそうだ。
ルゥルゥの部屋での現実の場面、ルゥルゥが語るお話の中の場面、そのお話に登場するのを心待ちにしているおもちゃたちの場面、と三重構造になっているので、読者が混乱しないように、挿絵や活字に工夫をこらしてある。
『おーばあちゃんはきらきら』
ひいおばあさんがお話をして聴かせると言う設定。おばあちゃんより、もう少し遠い「ひいおばあさん」ということで、遠い感じを出した。
ポツポツと切り取られた思い出をお話にして語るときに、多少のトリミングや色付けをすることにより、くっきりしてくる。それは嘘や捏造ではない。
『母の友』誌に1年に1話ずつ6年間連載したものに、2話書き下ろして加えた。
『リリコは眠れない』
高楼方子さんは、あまり主張や書きたいテーマがあって書くタイプではないそうなのだが、 これは珍しく"書きたい”ことがあって書いた本だという。
小さいころに感じた「中年のおじさん」に対する嫌悪感。お酒を飲んでガハガハうるさくて…。子どもの頃憧れた一級上の憧れの少年も年を取ればそんなおじさんになるのか、なって欲しくないという思い。
傷つかないように武装して生きてきたが、そんなことしなくてもよかったんじゃないかという気付き。
私もこの本は半年ぐらい前に読んだ。
その時書いた感想↓
心の奥にたまった重たいものを掻き出されるような感じ。リリコのきょうだいに対する複雑な思い、自己嫌悪と認められたい欲求、おとなになることへの不安、後悔とその意味、大切な友達への思い、などなど、共感と感動とが渦巻いた。
話の流れも、実際に寝ている時に見る夢の感じそのもので、現実かと思って読んでいたら実は夢でした~といういわゆる「夢落ち」とは違う。
最後は温かいハッピーエンドでよかった。
児童書というより、自我に目覚めた思春期以降の大人が読むのにいい作品だと思う。
高楼さんの思いは通じているよね? 高楼さんは、「子どもにこんな作品を届けてしまっていいのだろうか」と迷いながら書いたそうだが、私はできれば子どもの頃にも読みたかった。
図書館で借りて読んだものだったので、今回購入し、サインをしていただいた!
『小公女』(翻訳)
- 作者: フランシス・ホジソン・バーネット,エセル・フランクリン・ベッツ,高楼方子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2011/09/15
- メディア: 単行本
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日本文学科出身の高楼方子さんが翻訳だなんて珍しい。なぜかと思ったら、『緑の模様画』の中で『小公女』を使った時にいろいろな翻訳をあたったが、完訳でよいものがなかったので、とのことだった。
こういう古典作品は多面的に光っている。そして、ずっとそこにある。そういう大切なもの。
高楼さんが、思い入れたっぷりなこの名作をどう訳されたのか、楽しみだ。
『老嬢物語』
世界のあちこちで出会ったおもしろい「老嬢」たちの話を語っていくエッセイ。偕成社のHPで連載されていたものをまとめて、やっと近々出版されるとのこと。
一足早くこの本の中から2編を朗読してくださった。
このWeb連載は私も読んでいたのだが、高楼さんご自身の声で読んでいただくと、おもしろさも倍増した。やさしい、語りかけるような、魅力ある朗読だった。
『つんつくせんせいとかさじぞう』
最後に発売されたばかりの、つんつくせんせいの最新刊を読み聞かせしてくださった。これも、絵もお話も読み方も、かわいくてすてきだった。
地の文ではなく絵の中に挿入されている台詞の扱い方など、読み聞かせをするときの参考にもなった。
ああ、楽しい2時間だった。そして、サインもしていただき、言葉をかわすこともできた。
今回は私が東京に出向いたが、今度はうちの市にも高楼方子さんに講演に来ていただけないものかと、主催された役員の方に話しかけてみた。
「高楼方子さんの大ファンなんです」と言うと、なんと「今から上で高楼先生を囲んで、お茶会をするんだけどご一緒しませんか」と誘ってくださった!
こんな機会を逃す手はない。「役員でもないのに、図々しく入れていただいていいんですか?」と言いつつ、足はもう向かっている私。
高楼方子さん、偕成社にお勤めの初々しいお嬢さん、主催者の役員の方々、あかね書房で『リリコは眠れない』を担当された編集の方、私と同じく大ファンで飛び入りの方など、10人ぐらいの集まりで、直接お話ができて、大感激だった。
ここでも話が盛り上がってあっという間に2時間が過ぎ、名残惜しく解散となった。最後に一緒に写真もとっていただいた♥
夢のような1日だった。その晩はあれこれ頭のなかで再生し続けて、なかなか眠れなかった。