◯ 本の紹介 『オオカミ王ロボ』 シートン/著、今泉吉晴/訳・解説
◯ 絵本 『セルコ』 内田莉莎子/作、ワレンチン・ゴルディチューク/絵
『オオカミ王ロボ』
図書館にずらりと揃っているシートン動物記のシリーズ、まったく読まれていないようなので紹介することにした。
シートン動物記、オオカミ王ロボ、について聞いたことのある子は結構いたが、読んだことのある子は数人しかいなかった。それでも数人いただけいいのかもしれない。
これもきちんと事前に読み込んで、台本を書いておいた。
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今から120年以上前、馬に乗って牛の群れを管理するカウボーイが活躍していたアメリカ西部のニューメキシコ州での話です。
オオカミ王ロボと呼ばれる、大きくて賢いオオカミがいました。
わずか6頭の群れのリーダーですが、このロボの群れは他のオオカミとは違っていました。
オオカミはいつも飢えていて食べられるものならなんでも食べる、と言われてきましたが、ロボの群れにはこれは全く当てはまりませんでした。
病気や怪我などで死んだ動物は決して食べませんでした。人間が食用のためにきちんと処理した食肉にも手を付けませんでした。
自分たちが殺したばかりの獲物だけを食べます。そのために毎日1頭の牛を殺してきたそうです。しかも、牛たちの中でいつも最高の牛(1歳の雌牛)を選び出していた美食家だったのです。
当然、人間たちはロボの群れを退治しようと多くの作戦を立て、攻撃してきました。それでもロボたちのほうが上手だったのです。毒の餌には手を付けないし、罠の危険は見破ります。銃の怖さを知っているので、人間を襲うことは決してなく、人間を見かけたら遠くからでも物陰に身を隠します。
シートンは、自然豊かなカナダで育ち、絵が上手だったので画家になろうとしましたが、芸術よりも自然に興味があり、動物学者を目指したりしました。33歳の時、ロボの住む地域で牧場を持つ友人に頼まれて、ロボの退治に乗り出すことになりました。
これはシートンとロボの知恵比べです。シートンはオオカミの習性やロボの性格など詳しく観察し、綿密な計画を立てます。
オオカミは西洋の昔話ではいつも悪者役ですし、ここでも人間の立場から見ると、ロボは牛を殺す悪者で、退治するシートンが正義の味方といえるのかもしれません。でも、シートンが書いたロボの話を読むと、いつの間にかロボに感情移入してしまうのです。それはどうしてでしょう。ぜひ読んで確かめてみてください。
シートンが描いた精密な絵もたくさんあり、最後には動物学者でありこの本の翻訳者の先生の解説もたっぷりついています。たとえば「ロボはほんとうにいたの?」とか「オオカミに懸賞金がかけられたって、本当の話?」「その後、オオカミたちはどうなったのかな?」とか。
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でも、ほとんど台本通りにはしゃべらなかった。思い入れが強かったせいか、勢いでどんどん進んでしまった。その分熱意が伝わったならいいけど。
オオカミに対する考え方が、牧畜文化の西欧と、農耕文化の日本ではだいぶ違ったということも話した。
『セルコ』
オオカミつながりで、この絵本を読んで聞かせた。
これは、年取って飼い主に捨てられた犬セルコが、オオカミの友情によってまた元の家に温かく迎えられる話。そのあたりは「泣いた赤鬼」と似ている。
でも、その後セルコはオオカミに恩返しをするために、結婚式がある日にオオカミを呼んで・・・
犬とオオカミの友情物語という感じ。温かくていい話だと思う。ウクライナの昔話だそうだが、ここは農耕文化らしく、オオカミはそれほど悪役ではないようだ。
10分。