「いただきバス」などのバスシリーズや「ねこときどきらいおん」「バナーナ」などで有名な絵本作家、童話作家、作詞家、あそびうた作家の藤本ともひこさんの講演会。・・・というより”絵本ライブ”と言うべきか。
忘れないうちに内容をまとめておこうと思う。
藤本さんは、1991年に講談社絵本新人賞を受賞して絵本作家デビュー。その後10年は公務員として勤めながら絵本作家を続けた。退職してからは保育園に週4日造形あそびの指導をしに通う。そこで絵本を集団で楽しむということを知った。
★絵本『バナーナ』(ギターと歌で)
生で聴くとなおさら楽しい。「歌って読み聞かせをしたい方、公式動画がありますから、それをみて真似して歌ってくださいね」とのこと。
今も3つの園に通っていて、朝の15分間絵本の読み聞かせをしている。すると子どもたちの反応が直接分かるので、それが強み。「何を望まれているか」を考えてかいた最初の絵本が『いただきバス』
★『いただきバス』
藤本さんは、大型絵本(かなり重いのに)を持って、場面に合わせて揺すったり回したり、ダイナミックに読み聞かせをしていた。時々アドリブも入る。
読み聞かせ正統派の人たちで「感情を入れすぎず淡々と、書いてあることを一字一句変えずに読むべき」という方がいらっしゃるが、それは絵本次第だ。目の前に入る子どもたちが楽しめる読み方、その絵本にとって一番いい絵本の読み方というものがある。絵本の中にはこのようにふざけて読んでいい絵本もある。一冊一冊を大切に。
『いただきバス』を大切にする=ふざけて読む
例えば『スーホの白い馬』などはふざけて読んではいけない絵本。絵本に寄って違うのだ。
白い絵本を出版社からもらって、それに手がきで絵本にし、保育園の子どもたちに読んで聞かせて反応を見る。
アイディアを書き留めたスケッチブックやメモノートが段ボール箱いっぱいある。そのうちのほんの一部が本当の絵本になる。
★『ばけばけはっぱ』
構想8年、撮影1日。「写真絵本は売れない」というジンクスが出版界にあって、写真絵本はほとんどない。これは多磨霊園で撮影した。
これは参加型絵本で、子どもたちに「ふう~」と息を吹きかけてもらって余計な葉っぱを飛ばすと、隠れている動物などが現れるようになっている。「その動物も葉っぱでできているんだから、ホントはそれも飛んじゃうはずなんだけどね」
ブタが隠れているところではもう「ブタ~」と答えがすぐ出るので、「じゃあ、もうブタってわかっちゃったから、ブーって飛ばそう」と言って、みんなが「ブー!」っとやると、「うわっ、ツバかかっちゃった!」と拭う真似をする藤本さん。これがまた笑いを誘う。
★『ねこときどきらいおん』
CDの歌を流し、歌いながら踊って『ねこときどきらいおん』。これはEテレの「おかあさんといっしょ」で時々やっているもの。
藤本さんの大げさな身振りと表情で楽しくなる。
かつて、これについてテレビ局に電話が来て、「ねこ→ライオン、さる→ゴリラ、というのは同じ種類の仲間だからわかるけど、なぜその次が、パンダ→ひるねなのか?おかしいじゃないか。パンダ→くまとかにするべきでは?」と言われたことがある。でも、子どもはそんなことは言わないで楽しんでいる。
実は、4コマ漫画と同じように起承転結で作ってある。「転」が「パンダ→ひるね」で、「結」がフグの破裂。
西本鶏介先生に「藤本くんの頭の中は幼児だ」と言われたことがあるが、それは褒め言葉として受け取っている。自分としては小学2年生ぐらいだと思っているのだが。
❤質問❤ 絵本作家を目指しているので、アドバイスを。
まず図書館の絵本を全部読む。いろいろな芸術に親しみ、アンテナを張る。自分を信じて最後まで書ききる。100冊ぐらい書いて、そのなかで一番いいものを出す。思っているだけではダメ。実際にやらなければ。
家の中に幼児がいる期間はほんの6年ぐらい。それを楽しまなきゃ損。そのときに一緒に楽しんでもらえるものを僕は作ろうとしている。
★『こんなかいじゅうみたことない』
この絵本は、初めて見たが、すっかり魅せられてしまった。他の何人かも「あれ、いいよね。欲しくなった」と言っていた。
怪獣の子どもは静かに絵本を読んでいたり、部屋をきちんと片付けていたり、靴を揃えたりすると、親に怒られる。それがまた、普通の人間の親の言うことと正反対なので、おかしくて笑える。
しかも、手に負えないということでその怪獣の子は保育園に預けられてしまう。そこには、ちびっこ怪獣(人間の子ども)たちがいた。
子どもたちからも親たちからも「あるある~」「わかる~」と共感を得られて、楽しいお話だ。絵もかわいい。
★『だじゃれ十二支』
これは、ギターを弾きながら歌ってくださった。楽しくてノリノリだ。
「文・中川ひろたか、作曲・中川ひろたか、僕は絵を描いただけです。」
この歌で十二支はバッチリ覚えられそう。ダジャレの内容は、幼児には少し難しいものもあるので、小学生ぐらいがいいかも。
僕の強みは子どもとの付き合いがあること。卒園していくこの夢を後押ししたい。漠然とした夢では届かないから、その夢と現実の隙間を埋める絵本を書いた。それは職業について、子どもにもわかるように、でも説教臭くなく、背中を押すようなもの。
作詞を始めてから、誰かと共同作業でものづくりをする面白さを知った。思いがけない化学反応が起こったときがおもしろい。
時間を見てびっくり。1時間半経ってしまったなんて信じられないほど、あっという間だった。ほんとに楽しい時間だった。